バックトゥザフューチャー
奪われた人生の記憶
そして、初めて見たときと印象が違う映画が、バック・トゥ・ザフィーチャー。
10代のころに見たときと、中年以後では全く違うんですよね。
80年代の傑作と言われてる映画バックトゥザフューチャーのストーリーは、主役の高校生マーティーが、科学者であり歳の離れた親友でもあるエメット・ブラウン博士が作ったタイムマシンを使って両親の青春時代にタイムスリップし、結果的に自分や家族に都合の良い形に運命を変えていく話です。

主役のマーティーの家族はタイプスリップする前はさえない家族でした。
父のジョージは、若いころからジャイアン系のビフにいじめられ搾取され頼りがいがなく、叔父は服役中、兄はブルーカラーでした。しかし、タイムスリップの旅を終えて帰ってきたら、父は勝ち組に替わり、兄はエリートビジネスマンに替わり、父とビフの力関係が逆転して、ビフは一家に使役されてる側に替わりました。
若いころこの映画を見たときは、ただ「面白いな」で終わってました。多くの視聴者と同じく、主役のマイケル・J・フォックスに自分を投影してみてました。未来の書き換えがうまくいってよかったな、と。
しかし、中年以後この映画を見終わると、全キャラクターを客観的に広範な視点で物語を見ることになりました。その結果、非合法な方法で他人の運命を捻じ曲げつづけながら自己都合に徹する主役の独善性に焦点があい、主役のマーティーには共感ができませんでした。
似たことをしてた人を知ってるからです。
監督のスピルバーグは、幅広い年代の多様な人たちが等しく楽しい映画を作るのがうまい方です。大衆の願望の最小公約数を作るのがハリウッド映画ですから、そういう話になるのだと思います。
エンターテイメントだから許されるのでしょうが、若いころと違い、主人公の側に共感が持てず昔のように楽しめないのです。
若いころから主役の男子の父を苛め続けていた悪役のビフは、大統領になったドナルド・トランプがモデルになっているといわれています。金持ちで体が大きくて暴力的で、アメリカの強者はこんな感じらしい。

アメリカ社会における強者だったビフは、主人公が過去から帰ってくると立場が逆転します。
そして、シリーズを重ねていくと、ビフが「本来の人生」を思い出すのです。

イジメとは次元が違う「人生を奪われる」という搾取に気が付いた瞬間、ビフは復讐と怨念を持ちますが、映画だと「悪役=敵役」であるために、それが「悪」「危機」ととらえられるのです。タイムスリップというインサイダー的な技術を駆使する主役により、どんでん返しを繰り返し、結局、主人公の都合の良い形に世界が変えられていきます。
シリーズの最後のラストシーンでは、親友の科学者の「未来は自分でつくるんだ」という楽観的な言葉で締めくくられますが、インサイダー取引で儲ける投資家の格言のように白々しく響くのです。
老齢期になってからまたこの映画を見ると、違う感想を持つと思う。