さくらのまち 三秋 縋 (著)
二度と戻らないつもりでいた桜の町に彼を引き戻したのは、一本の電話だった。
「高砂澄香が自殺しました」
澄香――それは彼の青春を彩る少女の名で、彼の心を欺いた少女の名で、彼の故郷を桜の町に変えてしまった少女の名だ。
澄香の死を確かめるべく桜の町に舞い戻った彼は、かつての澄香と瓜二つの分身と出会う。
あの頃と同じことが繰り返されようとしている、と彼は思う。ただしあの頃と異なるのは、彼が欺く側で、彼女が欺かれる側だということだ。
人の「本当」が見えなくなった現代の、痛く、悲しい罪を描く、圧巻の青春ミステリー!
人間とは、一人一人が、自己という閉ざされた世界で生きるいきものであり、自身の感覚や感情を通して他者や世界を判断する生命体であり、同じ事象に遭遇し同じ空間や時間を共有しても、人の数だけ認識の違い=誤解があり、その集合体が社会なのだなとわかる作品だった。
面白かったヨ。